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PRODUCT STORY
製品開発ストーリー

試行錯誤とあきらめない信念で
新たな価値を
アップサイクル製品開発の道のり

きっかけは「卵の殻」

日本エムテクスは四半世紀以上の歴史をもつインテリア建材メーカーです。工事の請負などを主要事業とする建設会社として創業しましたが、当時から世の中のためになる、おもしろいものを創りたい、という思いがあり、チャンスがあれば自社製品を開発・販売したいと考えていました。

インテリア建材メーカーへと変貌を遂げたのは、「卵の殻」がきっかけでした。卵は日本人にとって非常に身近な食材です。消費量は世界第2位ですが、その殻のほとんどが廃棄されていたため、ある時、「卵の殻を再利用できないか」と持ちかけられたのです。

卵の殻には無数の気孔があります。生命維持に欠かせない気孔のメカニズムを内装材に応用すれば、臭いや余分な湿気を吸収する機能性製品ができるのではないか、とひらめきました。幸いにも同様の製品がまだ世の中に出回っていなかったため、大きな可能性を感じました。まだ、「アップサイクル」という言葉が一般化されていない時代です。「リユースでイノベーションを起こし、循環型社会を目指す」という思いで、新製品の開発に取り組みました。

失敗から改善しヒット商品に

最初に開発したのは、「アッシュライト」という天然素材100%の内装仕上げ材です。原料にこだわった製品でしたが、施工性やメンテナンスの問題から製造を終了せざるを得ませんでした。その「アッシュライト」の問題点を探り、試行錯誤しながら欠点の改善に努めて出来上がったのが、「卵漆喰」と「天然スタイル土壁」です。

「失敗から学べ」と言いますが、製品開発はまさにその繰り返しです。製品化できても販売に結びつかなければ意味がありません。販路拡大を目指して、営業の仕方を工夫したり、さまざまな展示会に出展するなど、地道な活動を続けました。

そのうち内装材の主流が塗料から壁紙に変わり、乾いた材料を用いて壁紙を開発しました。この「エッグウォールシリーズ」が、建設会社からインテリア建材メーカーへ移行するターニングポイントになりました。この製品を使用した家で暮らし始めたユーザー様から、「洗濯物を室内に干しても快適」「ペット臭が気にならなくなった」など、実感のこもった声が施工した会社に届くようになったのです。利用者の言葉には説得力があり、次第に卵の殻を配合した製品に関心を示してくださる施工会社や設計事務所が増えていきました。

環境に配慮した
ものづくりに光

さらに追い風となったのが時代の変化です。2015年にSDGsが国連総会で採択され、サステナブルな社会の実現に向けて世の中が動き始めたのです。卵の殻でつながる大手マヨネーズメーカーとのPRなどを通じて、環境に配慮したものづくりに取り組む企業イメージが定着すると、さまざまなメーカーから「製造時に発生する廃棄物を素材に何か作れないか」という相談をいただくようになりました。大手メーカーほど製造時に出る大量の廃棄物に困っていたのです。快く依頼を受け入れ、再生の方法を模索するなかで、鉛筆製造時に出る木くずやワイン抜栓後のコルク、衣料の端切れなどを原料とした新製品を次々に開発しました。

新製品が大きな反響

デニム工場から出る端切れで作った左官材「ヌルデニム」もその一つです。デニム独自の色合いや風合いを楽しめるだけでなく、水をかけて練り直すと再び左官材として使える「資源循環型の製品」であることが注目を集めて、多くのメディアに取り上げられました。

「ブランディングのために、サステナブルな製品を使いたい」「製品のEV化に合わせてショールームもサステナビリティを意識したつくりにすることは可能か」など、大手企業からの反響も大きく、その縁で内装業界の大手企業と事業提携に至りました。

新規の商談は商品に関心をもっている方からの引き合いがほとんどで、問い合わせへの提案やユーザーへのサポートがメインになってきたことから、2024年にオフィスとショールームをフルリニューアルしました。ショールームでは建材メーカーの枠を超えた当社の取り組みや、素材の可能性を感じていただけるよう、完成品だけでなく、扱っている素材や開発途中のものも展示しています。

世の中のためになる、
おもしろいものを創りたい

今では、アップサイクル製品の素材になるゴミの総量は年間で約30トンに及びます。次のステージでは、いかに「製品を売るか」から、いかに「ごみを減らすか」をテーマに、減らしたゴミの量を数値化するなど、成果をより明確に示していきます。また、トン単位で排出される「ゴミ」を引き受けるための、サプライチェーン体制の充実を図るなど、長期的な環境ビジョンのもとで仕組みづくりとものづくりを進めていきたいと考えています。

卵の殻と出会った頃に、今日の姿を想像できていたかというと、そうではありません。ただ、あきらめずに長く続けていれば、必ず成し遂げられるという自信はありました。幸いにも、卵の殻が進むべき道を示してくれたので、迷うことなく思いを形にすることができました。これからも、アップサイクルで、世の中のためになる、おもしろいものを創り続けていくことが私たちの使命だと思っています。